何事も「学習の3原則」に従ってやればよくできるようになる

2-3歳
幼児向け
2023年11月13日
何事も「学習の3原則」に従ってやればよくできるようになる

学習の3原則

  1. ごく優しいことから始める
  2. それを十分習熟させる
  3. 学習済みのことを常に復習しながら新しいことを少しずつ付け加える

これが学習の3原則と言われるものです。
これは乳幼児の学習から社会人の学習、そして音楽やスポーツの練習などにも通用する原則です。

原則1 ごく易しいことから始める

ごく易しいことならすぐ始められる

何事もいきなり難しいことをしようとしてもうまくいきません。
最初から難しいことに挑戦しようとすると、すぐ壁にぶつかってしまって、投げだしてしまいたくなります。どんなことも最初は欲張らず、ごく易しい簡単なことを少しだけするようにすればうまくいきます。

ドーマン研究所のグレン・ドーマン博士は、幼児のカード学習を始める時、最初は1回に3枚のカードを3秒見せることから始めましょうと言っています。

3枚のカードを3秒見せるだけなら、誰でもすぐにできますね。
何事も最初はごくわずかのことをごく短時間するのが秘訣です。

もう少しやりたいと思うくらい、つまり「腹8分」の状態を続けていけば、「もっとやりたい」という気持ちが持続します。またやることのレベルも最初は簡単すぎるくらいがよいのです。

一般的に幼児は、らくらくできることなら喜んでやろうとします。
反対に少しでも「難しい」と感じると、とたんに嫌になってしまう傾向があります。
「ごく易しいことを」「わずかな量」「短時間で」というのがうまくいくための大事な秘訣です。

原則2 十分習熟させる

できることこそ繰り返す

行き詰ることなく順調に学習を進めていくためには、やりかたがわかり、何とかできるようになった段階から、すらすら出来るようになるまで反復練習をする必要があります。

十分に習熟しないままに先に進むと、どこかで行き詰まります。
学校での落ちこぼれは、この習熟不足が原因であることが大半と言ってよいでしょう。

算数の足し算を例に取ると、頭の中で数を操作して答を出している段階から、式を見た瞬間に答が浮かぶまで習熟させることが大事です。

例えば、「6+5=」という問題を見た時、頭の中で数を操作したり、指を使って計算したりして答を出している段階では、まだまだ習熟不足です。
「6+5=」という問題を見たら、答の「11」という数がパッと瞬間的に思い浮かぶまで反復練習をして習熟させることが大切です。

百ます計算で有名な陰山英男先生は、「読み・書き・計算」で学力再生(小学館)という本の中で、百ます計算で100問の足し算を解く時間について次のように述べています。

タイムについて経験的に言いますと、小学校中学年の場合、2分以内でできると、算数の学習が支障なくできますが、3分近くなると、計算のつまずきが目立つと言う統計があります。それで、2分以内を目標に4月から始めます。
始めた当初は、平均すると4分くらいだったものが、7月には23人のうちの14人が、1分台でできるようになりました。100問2分以内と言うと、1問を解いて答を書く時間が1.2秒以下ということになります。1問1.2秒以下ということは、ほぼ1問の答を書いている時間くらいで、答は式を見た瞬間に出せる必要があります。
これくらい習熟しておけば先々筆算の足し算などの問題に進んでもラクに解答することができます。

引用「読み・書き・計算」で学力再生(小学館)

反対に3桁+3桁のような筆算の問題を何十問も解く際に、いちいち頭の中で数を操作したり、指を使って答を出しているようでは苦しくなって行き詰るのは明らかでしょう。
ただし幼児の場合は、小学生のようにスピーディーに数字を書くことが出来ないことはよくあります。
その場合は時間はかかっても、答が瞬間的に出ているようなら問題ありません。
要は式を見たら答が反射的に出るくらい習熟させておくということが大事ということです。

原則3 常に復習しながら新しいことを少しずつ付け加える

覚えるのも早いが、忘れるのも早いのが幼児の特徴

幼児は暗記が得意で、見るもの聞くものをすぐ覚えます。
しかし、いったん覚えたことも少し触れないでいるとすぐ忘れてしまうものです。

幼児の場合、「常に復習して維持しておかないと忘れる」というのは、能力のいかんにかかわらず誰にでも起こることです。幼児の場合、しっかり定着して忘れないようになるまでにはかなり長期間にわたる「熟成期間」が必要です。

もう出来るようになった、マスターしたと思って油断しているとすっかり忘れてしまって愕然とするようなことはよくあります。
それを防ぐためには、いったん出来るようになったことも常にやり続けて記憶を維持することが必要です。そうしているうちに、いつかもう忘れないというようになります。

常時復習しながら、スモールステップで少しずつ新しいことを付け加えていく

このように、学習を順調に進めていくには、常時復習し続けて、できるようになったことを維持しながら、新しいことを徐々に学んでいく方法が効果的です。
新しいことを学ぶ際は、スモールステップで徐々にレベルを上げていけば、難しさを感じることなくスムーズに学習できます。

バイオリンの指導で世界的に有名なスズキメソードでは、いったん弾けるようになった曲は、いったん全部おさらいして弾きながら新しい曲の練習をするそうです。

そして弾けるようになった曲が多くなって、全部一度におさらいするのが困難になったら、「宝くじ方式」と言って、くじ引きのようにして、引き当てた曲を練習するとのことです。

落ちこぼれを出さない実践

初歩こそ最も肝心

このスズキメソードの指導法を使って、学校の算数でひとりの落ちこぼれも出さずに進級させる実験が長野県の松本市の公立小学校で行われたことがあります。

この実践報告が「落ちこぼれを出さない実践」や「幼児育て方ひとつ」という本に紹介されています。(いずれも才能教育研究会副所長 田中茂樹著 サイマル出版会)
※残念ながらサイマル出版会は廃業、こちらの書籍は入手困難な状態になっております。

「幼児育て方ひとつ」田中茂樹著より

(前略)いかがでしょうか、こうやって落伍者を次々切り捨てているのが現在の学校教育の実態なのです。これに対して、私が提案する子どもを主体とする教育だとどうなるでしょうか。
まず、最初が大変に違います。
従来の方法ですと、最初は簡単で誰でもできるからとあっさり通過してしまいます。
私は違います。

初歩こそ、最も肝心ですから、ここにじっくりと時間をかけます。
誰でもできる簡単なことを、より上手に(より正確に、より速く)できるようにするとともに、できる喜び(自信)、興味(集中)を養っておきます。
1段から2段に上がるには、じっくり時間をかけて、1段上がるコツと、上がりたい欲望をかり立てます。

(中略)もし仮に段々が13段あるとします。
従来の方法ですと、だいたい毎月1段ずつ上がる計画を立てます。 そして1段から2段は上がるのが、5月ごろになるでしょう。

ところが私が提案する子ども主体の教育だと、それが9月か10月ごろまでかかります。
しかし、後は大変なスピードです。1ヶ月に2段も3段も進んで、2月ごろにはもう目標に達していて、しかも遅れるものは1人もいません。

このへんが、なかなかわかってもらえないのです。どうしても、これぐらいで十分だろうと思いがちで、9月までやるべきものを7月でやめてしまう。
子どもたちの能力の育ちを見極めることができないのです。

カリキュラムは、最初の部分を綿密に、時間を十分取ってするように計画しなければなりません。そして、子どもたちの能力の育ちをみきわめることが肝心の要です。
繰り返し繰り返し最初の部分に取り組んで、子どもの能力の定着を辛抱強く待つのです。

子どもたちは、大人の方が降参してしまうほど、同じことの繰り返しを喜びます。
同じお話を何回もせがむ。ひとつの運動でも同じことを繰り返して、もっと上手になろうとします。遊びにしても同じです。

これはどうしてでしょうか。それは、子どもたちがひとつの能力を身につけるには、繰り返すより方法がないからです。繰り返すこと、それは子どもたちの本能的欲求なのです。
とはいっても、同じように繰り返しているだけでは、子どもと言えども嫌になります。
繰り返すごとに進歩することが、子ども自身にもわかるように評価の方法も考えなければなりません。

(中略)それともう二つ 「誰でもできることを繰り返し練習する」
「初歩を最も多く練習する」ということも理解されていません。
誰でもできることを何も繰り返す必要はない。
出来ないことを繰り返し練習して、できるようにするのがよいのではないか。できることを繰り返すなどの行為は、全く無駄で、第一子どもが飽きてしまうというのです。

何かができるということは、どういうことでしょうか。
2に3を加えると5になる、という計算ができるとします。
つまり、初歩は理解できるということです。
そして今までの教育はほとんどこれで、次の教材へと進んでしまったのです。
私が主張しているのは、そうではなくて、これを繰り返し練習して、2と3を見ると反射的に5という数がすぐ浮かぶようになるまで訓練するということです。

鈴木先生は、「初歩が一番大切であって、初歩は初歩なりに簡単にすませればよい、などと考えることが、指導の最初の大きなつまずきである」と言われています。
理解できるだけは駄目なのです。より完全にし、身につけるまでは、繰り返さなければならないのです。

(中略)
「これだけやれば十分ではないか」「時間的にこんなに長くかかってよいのか」などと迷いだすでしょう。
事実じっとこらえて子どもの能力の成長を我慢強く待っているのは、辛いものです。どうしても、早めに次の段階に進みたくなります。連続発展とは、途中とどまることなく、発展していくことで、初期にどれだけ能力として身につけたかがポイントです。

(中略)
私はいろいろな学習指導の中で、落伍していく子どもたちを何とか救い上げようと努力してきました。そこでいつも突き当たる壁は、基礎がしっかりしていないということです。
現在何とかついていける子どもでも、基礎さえもっとしっかりできていれば、こんなに苦労しなくても気楽についていけるだろうにと思うことがたびたびあります。

すべては、最初の基礎をもっと十分に、確実にしておけばよかったと思うことばかりですが、それに気づくのは、教材がかなり進んでからなので、始末におえません。
教材が進めば進むほど、初期の基礎がいかに重要だったかがわかってくるのです。

引用「幼児育て方ひとつ」田中茂樹著 サイマル出版会

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