自己肯定感の高い子に育てましょう(その1)

幼児 子育て
幼児向け
2023年11月25日
自己肯定感の高い子に育てましょう(その1)

自己肯定感を持つことはなぜ大事?

明るい気持ちで意欲的に生きられる

自己肯定感が高く自分に自信のある人は、明るい気持ちで意欲的に生きることができます。
困難にぶつかっても、解決できるはずと考えたり、将来のこともうまくいくにちがいないと楽観的に考えることができます。そうすることで明るく意欲的に生きていくことができます。

将来の夢が持て、挑戦意欲がわく

将来の夢を持ち続けるためには、自分もやればできるという自信が必要です。
自信がなく「どうせ自分なんて」と思っている人は、やればできるはずのことも、「自分には無理」と思って、最初からやろうとしないことがあります。
何事も出来ると信じてやれば出来るもので、自己肯定感の高い人は将来の夢や明るい希望を持って生きられます。

人に穏やかにやさしく接することができる

劣等感の強い人は、ひがみや妬みの気持ちを持つことが多く、人に対して批判的になったり、敵対心を持ったりすることがあります。
また虚勢をはったり、自己弁護をしたりしがちです。
反対に自己肯定感があり静かな自信を持っている人は、人に穏やかに優しく接することができます。

自己肯定感の高い人が少ないのはなぜ?

子ども時代に否定的自己イメージが形成されている

ほとんどの親が、よかれと思ってわが子の弱点や欠点を指摘して是正しようとします。
また叱る際に「行為」を叱るだけでなく子どもの性格や能力、人格を否定するような叱り方になってしまっていることがあります。
その積み重ねで、否定的なマイナスの自己イメージが形成されてしまうことが多いようです。
また長所やよい行いを褒めて育てる親が少ないためにほとんどの人が自分のことを過小評価してしまっています。

自分の長所に気づいていない

人は長所より、短所に目がいきがちで、どうしても短所や問題点弱点が気になるものです。
また人から見るとすごいと思えることも、本人はらくに出来てしまうことなので、すごいとも何とも思わないものです。
そのために、長所や優れている点も本人にとっては「普通のこと」で、たいしたことでないと思ってしまっています。
このように自分では自分の長所に気がつきにくいので、長所がいっぱいあっても自己肯定感にはつながりにくいようです。

恐るべき潜在意識の力

以下はあるセミナーで紹介された潜在意識の恐るべき影響を示す例です。
◆兄と比較され、否定的な評価をされた幼少期の太郎くん

太郎くんには優秀なお兄ちゃんがいました。
お兄ちゃんは頭がよいおりこうさんで、落ち着きがあり鉛筆を持って何かを書いたりするのが好きな子でした。
早い時期から机に向かって集中して学習するようになり、その結果、有名私立小学校に合格することができました。
喜んだお母さんは、今度は弟の太郎くんにも同じことをしようとしました。
ところが太郎くんはお兄ちゃんと違って、外遊びが大好きな活発な子どもで、落ち着いて机に向かったりするのは苦手でした。

お母さんは、うまくいかないのにいらだって、
「お兄ちゃんはできるのに、どうしてあなたはできないの?」
「どうしてこんな簡単なことがわからないの?」
「どうしてあなたはこんなにがさつで落ち着きがないの?」
などという言葉をしょっちゅう投げかけて育てました。

成人になってわかった潜在意識の強い影響太郎くんは30歳になり、ある会社の中堅社員です。
ある日、太郎くんは所属の部署の部長に呼ばれ、
「わが社はこれから新しいプロジェクトを立ち上げることになった」
「社運をかけた大事なプロジェクトだが、君にその仕事のリーダーになってほしい」
「期待しているから、よろしく頼むよ」
とを言われました。

太郎くんは大喜びで席に戻りましたが、だんだん不安になって、きて帰宅したころには、深刻に悩み始めました。
「自分にそんな大役が務まるだろうか」
「いや、務まるはずがない」
「きっと途中で行き詰って失敗するに違いない」
と思い詰めて、とうとう出社できなくなってしまいました。

なぜそんなになってしまったのでしょうか。
実は大人になってからも太郎くんの潜在意識には次のような思いがありました。

  • 僕は頭が悪い
  • 僕は何をしてもうまくいかない
  • 僕は何をやっても失敗する
  • 僕は何をやってもほめてもらえない

潜在意識にこのような思いがあると、自分は駄目な人間だからたいしたことは出来ない。期待を裏切ることになるだろうからそれなら最初からしない方がよい、などと思ってしまいます。
どうしてもせざるを得ないとなると、心の病や体の病気が起こって、できない状況(しなくてすむ状況)を作り出してしまうようなこともあります。

上司がこういう任務を与えるということは、できる能力があると判断しているわけです。ところが、本人の潜在意識に「うまくいくわけがない」という思いがあると、やればできることもしようとしなくなってしまいます。
これは根本的には、潜在意識にあるそういう思いを解消しなければ、解決しない問題でしょう。

親はなぜわが子にマイナスの自己イメージを作ってしまいがちなのか

わが子の長所より欠点に目が行く

人は、長所より、欠点に目がいきがちです。
長所より欠点に注目してしまうのです。
そして、それを口に出して伝えて、何とか直そうとします。
しかし、これはなかなかうまくいかないだけではなく、その積み重ねで、潜在意識にマイナスの自己イメージを植えつけることになってしまいます。

𠮟る時にマイナスの自己イメージをつくる叱り方になってしまう

親は子どもを叱る時、冷静に教え諭すということは出来にくいものです。
どうしても腹立たしさをぶつけるような叱り方になりがちです。
また、子どもの性格や人格、能力を否定するような叱り方になってしまうことも多いものです。

  • 「どうしてあなたは〇〇なの?」
    (ぐず、がさつ、意志が弱い、意気地なし、根気がない、注意散漫・・・)
  • 「あなたは、いつも○○なんだから!」
    (だらしない、最後までやり遂げられない、不注意・・・)
  • 「どうしてこんなことも出来ないの?」

こういう叱り方になってしまうことが多いものです。

潜在意識にマイナスの自己イメージをうえつける問題の重大性に気がついていない

子どもは叱られても、その時はショックでも、そのうち忘れるだろうとほとんどの親が思っているようです。
しかし、褒められたことより、叱られたことの方が記憶に残るもので、よく同窓会などで、○○先生の思い出という話になると、みんながその先生に叱られたことを話しだすそうです。

また、たとえ顕在意識では忘れていても、潜在意識ではしっかり記憶に残っていて、その影響はずっと続くことがあります。潜在意識にマイナスの自己イメージが植えつけられると、一生それに支配されて、「何をやってもうまくいかない」、「どんな状況になっても幸せになれない」などと思ってしまうことがあります。
潜在意識下の自己イメージはこれほど大きな力を持っており、一生を左右する重大な影響があるということは、なかなかわからないものです。

ふがいない思いがあると、つい口に出してしまいがち

親は大なり小なり、わが子には期待をしているもので、それが裏切られると、ついつい口に出して嘆いたり、ぼやいたりしてしまいがちです。

  • 「どうしてうちの子はこんなに○○なんだろう」
  • 「どうしてこんな子が生まれたのだろう」
  • 「いったい誰に似てこんなに○○なんだろう」

そういうふがいない思いや、情けない思いがあると、夫婦間でそういことを話したり、他人に話したり、子どもに向かって言ってしまったりすることがあります。
子どもが寝た後ならいいだろうと思って、子どもが眠ってから夫婦でそのようなことを話しても、眠っていてもちゃんと潜在意識に入ってしまうと言われています。

謙遜することが、子どもにマイナスの自己イメージをつくることになる

日本には「謙譲の美徳」というものがあり、人がわが子のことをほめてくれても、「いえいえ、そんなことはありせん。実はうちの子は○○で・・・」などと、謙遜してしまうことがあります。
しかし、それを聞いている子どもは、お母さんはそんなふうに僕のことを見ているのかと思って、悲しくなったり腹立たしくなったります。
そして、その言葉はしっかり潜在意識に植えつけられることになります。

親はなぜわが子にプラスの自己イメージを持たせにくいのか

わが子の優れている点が見えていない

わが子の優れている点は、普通のことで当然のように思えてしまって、実は普通の子にはない、優れた点であるということに気づかないことが多いものです。
また、積極的に「いいとこさがし」をしようという意識がないと見えてこないものです。

肯定的評価やほめ言葉を伝えることが少ない

また、たとえ優れていると感じることがあっても、口に出して伝えるということはあまりしないものです。
「子どものよいところは、よいことなんだから、そのままにしておけばよい、悪いところを指摘して直させることが大事である」というように考えてしまいます。

ほめ過ぎるのはよくないと思っている

  • 「ほめることは大事だろうが、ほめ過ぎるのはよくない」
  • 「ほめ過ぎるとほめられることに慣れてしまって、何とも思わなくなる」
  • 「ほめすぎると増長して高慢になり、謙虚さがなくなる」・・・

このような心配をしてしまいます。
しかし、ほめすぎなどということは滅多になくて、ほとんどの人がほめたりないのが実情です。

マイナスの自己イメージをつくらないための注意点

叱らないで子どもを育てる

きちんとしたしつけをしたり、人として守るべきルールを守れる人に育てるために、叱ることも大事と考えられています。
しかし、前述のように冷静に教え諭すような叱り方はなかなかできないもので、腹立たしさをぶつけるような叱りかたになりがちです。
そうなると、子どもは素直に聞く気になれず、反発したり憎悪心を持ったリするので、叱っても効果がないばかりか、潜在意識にマイナスの自己イメージを作ってしまう結果になります。
よくない行いを改め、よい方向に導くことは大事ですが、叱らずにそのように出来る方法を考えるようにしたいものです。

  • 叱るのではなく、穏やかに冷静にその理由を説明して、子どもが納得して自制できるようにする
  • 禁止や命令の形ではなく、提案の形で、子どもが自分の意志でよくない行動を改めるようする
  • 早急によい方向にもっていこうと思わず、子どもの心理や発達を考えて、根気よく成長を待つ
  • 子どもが叱られることをしたくなる環境を作らない
  • 例: 子どもに触られると困るものは手の届かないところに置く
    ものを投げる、落書きをする場合は、これならしてよいという代替品を与える

子どものすべてを受け入れる

子どもの弱点や欠点は、親も子ども時代同じだったということがあるものです。親は自分と同じ欠点が子どもに見られるのは嫌なもので、それを嘆いたり、叱ったりしがちです。
しかし、子どもは親の気質や特性を遺伝で引き継いでいるとすれば、それで子どもを責めたり叱ったりするのはお門違いというものでしょう。
また短所は裏返せば,長所になることがあります。
たとえば、臆病で意気地なしと思える子は、慎重で思慮深い、温和で優しい面があるというように見方によって評価は正反対になります。

また、親の長所や優れているところもしっかり引き継がれているもので、よく見てみるとよいところが見つかるものです。
どの子も長所と短所を持っています。真の愛とは短所も含めて全存在を受け入れることです。

明るいプラスの自己イメージを育てるために心がけたいこと

ほめることの必要性と絶大な効果を再認識する

ほめることが大事であることは、誰もが知っていますが、その必要性や効果を正しく理解し、実践している人は少ないもの です。
「認められたい」「高く評価してほしい」「ほめられたい」というのは老若男女問わず、万人の共通した願いで、本能的欲求と言われています。

有名なマズローの5段階欲求説の第4段階は、「他者からの承認と自尊心の欲求」です。
これは誰もが強く望んでいるにもかかわらず、十分に満たされることはめったにないと言ってよいでしょう。
それだけに、心から褒められると心底嬉しくなり、意欲と希望が湧いてくるものです。
そしてその積み重ねが、明るいプラスの自己イメージをつくることになります 。
この本能的欲求を満たす、「心からほめる」ということが最高の愛情表現になるでしょう。
私たちはもう一度、この心からほめるということの重要性や効果の高さを再認識して、人に接するようにしたいものです。

子どもを肯定的に評価し、それを伝え続ける

我が子の長所、優れている点、好ましいと思う点をしっかり認識して、常に声に出して伝えていけば、 明るいプラスの自己イメージが形成されます。
「お母さんは、○○ちゃんのこういうところがすごいと思うよ」、「○○ちゃんのこんなところ がとても好きよ」というように。
子どもがほめるに値することをした時や、何かができるようになった時は、見逃さずに心からほめるようにする・・・、その積み重ねによって、子どもは 自信と意欲を持つようになります。
そして潜在意識に明るいプラスの自己イメージが形成されていきます。
褒め方に関する本の中に次のような一節があります。

褒め言葉を惜しんではいけません。
私たちはいい時にはどうも黙っているようです。
私たちは褒め言葉を惜しみすぎるのですから気をつけてそれを言うようにしましょう
(浜尾 実)

子どもであろうが、大人であろうが、人を育てる時は褒めるのが大前提。
褒めて褒めて「こりゃ褒め過ぎだな」と思ってもさらにもう1回褒める。それくらいでちょうどいい。
(曻地三郎)

人は他人を見るときどうしても批判的になります。
だから実際よりも2割くらい厳しい評価になってしまいます。
逆に自分のことは実際よりも2割くらい甘めに評価します。
だから相手のことは4割くらい増しでちょうどいい評価になるんです。
(斎藤一人)

本記事画像著作者:Freepik