優秀児の事例から何をどう学ぶか

幼児 子育て
幼児向け
2024年04月12日
優秀児の事例から何をどう学ぶか

子育ての体験談の参考のしかた

わが子の教育に生かせる方法を上手に学び取る

優秀児に育った子の子育て体験談は、参考になることが多く、上手に学びとることが出来れば、わが子の子育てに役に立つことがいっぱいあります。

しかし、子どもは10人いれば、10人それぞれ違うもので、ある子どもに有効な方法も、他の子にはそうでないこともあります。

また優秀児の事例は、よい条件が揃っていたために可能になったごく稀な例であることも多いものです。

優秀児の育成の体験談を聞いて、わが子の教育に生かそうとするのはよいことですが、判断を誤ると十分な効果があがらないことがありますし、逆効果になってしまうようなこともあります。

優秀児を育てた体験談は、親が冷静に判断して、その中からわが子の子育てに生かせることを、上手に学びとるようにしましょう。
優秀児の事例を見たり聞いたりした時、どうするかは人によってさまざまです。

優秀児の事例を見た時どうするか

  1. 自分には関係ない話だと思って、聞き流す
  2. 是非わが子もそうなってほしいと思って、同じことをやってみようとする
  3. どのような事例かを冷静に分析して、わが子の教育に生かせるところは、参考にして取り入れてみようとする

親がわが子によい教育をするにはどうすればよいかを常に考えて、よりよい方法を見つけて実践していくことは大事なことです。

その意味で上記の1では進歩がありません。
また2の場合、その事例や自分たち親子のことをよく考えずに短絡的にそのまままねてやってみようとしてもうまくいかないことが多いものです。

一番よいのは3の方法です。

いろいろある優秀児の事例

「完璧な子」はいない

ここで言う「優秀児」とは、公文式の高進度生のことを言います。
優秀児の事例紹介を見ると、すべてが完璧に思えてしまうようなことがあります。

しかし優秀児と言ってもいろいろな子がいるもので、すべてが理想的という子は珍しいと言ってよいでしょう。

また学力は高いが、他の面で問題があるような子もいますし、優秀児に育った要因がある一面親の悩みになっているようなこともあります。
(たとえば幼児、低学年の頃学習が順調に進む男の子の場合、おとなしくて内向的なため、落ちついて集中して学習ができるということがあります。親は、その性格が意気地ない、覇気がなくてもどかしいと思うようなこともあります。)

また高い学力を備えた子も、適切な方法でそのような力を身につけた子もいれば、そうでない子もいます。

どのような事例なのかを分析する

優秀児の事例を見た場合、どこが優れているのか、どの程度の能力の子の事例なのか、成功要因は何か、問題と思われるようなところはないか、などをよく考えるようにしましょう。

その事例の子どもの能力は、5段階の1のこともあれば、10段階の1のこともあります。中には100人中1番、1000中1番、10000人中1番のようなこともあります。

すごい事例であればある程、よい条件が全部そろっていたから出来た稀な例であることが多いものです。

また、能力に偏りがある場合や、その傑出した能力を育てるために、犠牲になっているものが大きいようなケースもあります。

高進度生の実態

高い学力を持った子どもにもいろいろな子がいます。
理想的と思える子もいますが、問題を抱えた子もいないわけではありません。

子どもの学力

◆基礎学力(読み書き計算など)

  1. 進度に見合った確実な学力がついている
  2. 何とか出来るが確実な力がついているとは言い難い

◆総合的な学力

  1. 読書量が多く、本を通じて豊富な知識を獲得したり、豊かな実体験もあるので、幅広い学力を身につけている
  2. 基礎学力をつけるための勉強に終始しているために学力の高さはあるが幅がない

子どもの意欲と自主性

  1. 意欲と自主性が育っていて、今後も本人の意志と力で進んでいける
  2. まだ親のサポートが必要で、子どもだけでは先に進めない
  3. 嫌々やっているので、親がやらせようとしなければやらない

その他の能力

  1. 好きなことや、やりたいこともいっぱいしていて勉強以外にもよくできることや得意なものを持っている
  2. 勉強ばかりやってきているために、能力に偏りがある

バランス

  1. 親が「心を育てる」「頭を育てる」「体を育てる」の3つを重視して育てていて、バランスのよい心身ともに健康な子に育っている
  2. 知育偏重の教育を受けてきたため、人格的に問題があったり、体がひ弱な子に育っていることがある

親の生き方

  1. 親がバランスのよい生き方をしている
  2. 親が子どもの教育のみに全力をあげ、それを生きがいにしているために、夫婦関係や子育てが終わってからの親自身の生きがいなどの点で問題がある

優秀児の事例を見た時、結果として学力や進度のみに目がいってしまうことがあります。そして、うちの子もこんなことができるようにさせたいと思って失敗することがあります。
どうしても「やらせる」という形になりがちだからです。
そして、上記の「高進度生の実態」の2や3 になってしまう恐れがあります。

本物の高進度生は、すべての好条件が揃ったごく稀な例

上記の「高進度生の実態」の各項目がすべて1になっているようないわば本物の高進度生は、すべての好条件が揃っていたから出来たごく稀な例であることが多いです。

なぜならば幼児のうちに中学レベル以上に進んでいる子は、全体のごく僅か(1%未満)です。
なおかつ今後とも自分の力で意欲的自主的に伸びていけると思える子は、その中の何割かです。
優秀児というのは、どういう条件が揃っているためにそんなに高い学力をつけることができたのでしょうか。

胎児・乳児期から豊かな働きかけを受けてきている

胎児や赤ちゃんの時から、本の読み聞かせや、語りかけ、歌を聞かせることなどの豊かな働きかけをいっぱい受けてきている。
そのために、高い知能や高い言語能力が育ち、豊富な知識を持っている。
また学習が大好きな子に育っている。

遺伝によって高い素質を引き継いで生まれてきている

子どもの能力は生まれつきの素質と生まれてからの環境や教育の両方によって決まります。
遺伝によって引き継がれるのは、可能性の大きさと環境から学ぶ感度とスピードと言われています。
従って進むスピードが速い子は、遺伝によって高い感度とスピードを引き継いで生まれてきていると言えるでしょう。

しかし、大きな可能性を持って生まれてきていても、環境が貧しく適切な時期に適切な教育を受けることができなければ、能力は低く固まってしまうようなこともあります。
遺伝によって引き継がれたものは普通でも、早い時期から豊かな環境の中で豊富な働きかけを受ければ、高い能力が育ちます。

また「能力」と「学力」は別ものです。
能力の高い子も怠けて勉強しなければ、高い学力をつけることはできませんし、能力は普通でも勤勉な努力を続ければ高い学力をつけることができます。

高い意欲と自主性が育っていて、自ら意欲的に学習に取り組んでいる

どこまでも伸び続ける子は、意欲と自主性が育っています。
親にやらされて、嫌々やっている子は、どこかで行き詰まるものです。
親が幼少期から子どもの意思を尊重しほめて育てて学習好きにすることで、意欲と自主性が育ちます。
また親は特別な働きかけをしていなくても、兄弟の上の子を見て、自然に自分も同じことをしたいという意欲が育っているケースがよくあります。

幼い時から落ち着きと集中力がある

落ち着きと集中力があるために、幼い頃から机に向かうのが苦にならないという子は、早い時期から順調なペースで学習が進みます。
従って、幼児期の学習は女の子の方が有利です。
男の子で早い時期から順調なペースで学習が進むのは、温和なおとなしい子が多いです。
反対に男の子は小学校半ばくらいから、がぜんやる気を出す子が出てきます。

本をよく読んでいる

特に国語の高進度生の場合、本をよく読んでいます。
たくさんの本を読んでいるために、読解力が高く、豊富な知識と語彙があり、読むスピードも非常に速いことがあります。

豊かな実体験がある

小さい頃から、いろんなところへ連れていってもらって、さまざまな体験をしている子が多いです。
そのために、知識が豊富で高い知的好奇心が育っています。

親が熱心なサポートをしている

高進度生の親は、毎日休まず学習する習慣がつくよう努力しています。
子どもが学習している時は、一緒に座って採点してあげたり、ヒントを与えるなどのサポートを熱心にしています。
また、子どもが学習するところを前もって自分でやっておいたり、子どもが苦労なくスムーズに学習できるような工夫をしている人も多いです。

目標を持つことについて

元F1チャンピオン セナとピケ

自動車レースの最高峰F1の元チャンピオンに同じブラジル人のアイルトン・セナとネルソン・ピケの2 人がいます。
この2 人はともに年間世界チャンピオンに何度もなっています。彼ら2人がF1チャンピオンになった道筋は対照的です。

セナは子どもの頃から将来はF1のチャンピオンになると宣言していました。カートのレースから始まって、国内のレースから国際舞台へ、そしてF3、F2と目標通りのステップを踏んで、F1デビューし、宣言通り世界チャンピオンになりました。

かたやピケの方は、同じく子どもの頃からカートのレースに出場していたものの、将来何になるかは決めておらず、一時期プロテニスプレヤ-をめざしていた時期もありました。

ところが自動車レースで連戦連勝を重ねて、次々ステップアップしているうちに気がついたらF1レーサーになって、ついにはF1チャンピオンまで上り詰めていたというわけです。

目標設定は子ども自身で

子どもの学習の目標を考えたり、将来の学校や仕事を選ぶ際にもこの2 つの方法があります。

長期目標を定めて、それめざして計画を立てて進んでいく方法と、目先のことに頑張って取り組んでいきながら状況を見てその先のことを決めていくというやり方です。
(セナ型とピケ型の2つの方法です。)

どちらかと言えば、明確な目標があった方が、頑張りがきいてより高いレベルに到達しやすいでしょう。

しかし、ここで大事になるのは、目標を決めるのはあくまで子ども自身であるということです。

親が子どもの気持ちや意志を考えずに、先走りして目標を決めてしまうような場合、失敗する可能性がきわめて高いと言わざるを得ません。

もちろん子どもが小さいうちは、自分で決められることには限りがあります。今やっている学習をいつまでに終わらせるとか、○年後どんなことができるようになりたい等の目標は、大人が一緒に考えてあげて、子ども自身で決められるようにするとよいでしょう。

将来の学校選びや職業選びについての親の役割は、子どもが判断できるような情報を与えること、そして、しっかりした学力をつけておいて選択の幅を広げておくことでしょう。

子ども自身は、子どもによって上記のセナ型かピケ型のどちらかで、いけばよいと思います。
しかし親は最初から高い目標を設定してそれを目指すセナ型ではなく、目先のことにがんばって取り組んでいきながら、その先のことを考えていくピケ型でいくべきでしょう。

本記事画像著作者:pikisuperstar/出典:Freepik